数年前に、『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン,2020)がベストセラーになりました。
スマホなどでインターネット情報を視聴したり、ゲームをすることの脳への影響や、危険性を紹介した本です。
この本が話題になったとき、私自身は“まだ新しい情報を鵜呑みにできないかな”という
信じるでも信じないでもない、どっちつかずの感覚ではありました。
しかしその1年後くらいから、発達に関して大きな課題のある子どもの療育や、スクールカウンセラーのお仕事にご縁をいただき
多くの子どもたちや子育てに難航している親御さんに出会い
日頃のご家庭での様子や、育ちに関するお話をうかがってきて
“子どもの脳にはスクリーンからの刺激は危険”
と、とても強く感じるようになりました。
「あまりにもゲームの時間が長いから注意したら、頭がおかしくなったみたいに泣き叫んで、警察も家に来た」
「幼稚園までは先生から『何も心配なことはないです』と言われてきたのに、小学生になってから急に落ち着きがなくなってADHDなんじゃないかと指摘されるようになった」
「禁止されているのに、朝、誰よりも早く起きて、こっそりゲームしている」
というような、ゲームやYouTubeにまつわる相談が半数以上を占めているといっても過言ではなく
中には、ゲームを制限されたことで「刃物を持ち出す」までいってしまったり
小学生ながら夜通しゲームを止められないといった『ゲーム依存』が強く疑われ
親御さんもひどく疲れきっていたことから、入院治療のできる病院を紹介したこともあります。
特に注意が必要と感じるのが
〇お子さんがADHD(注意欠如・多動症/注意欠陥・多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害/限局性学習症)など発達障害の診断を受けていたりその傾向がある
〇知的な遅れがある
〇発達性強調運動障害や視覚機能に課題がある
場合です。
核家族で、共働きだったり、ひとり親家庭が多い現代
仕事と、家事と、子どもの世話を母親がほぼひとりでこなしているご家庭も多く
“とにかく子どもが静かにしてくれる時間”はとても貴重です。
ましてや発達に特性のあるお子さんの場合
“子どもが機嫌よく長く集中してくれる時間”がなければ、親御さんの心身の健康を保つのが難しくなってしまいます。
私自身も、子どもにゲームやスマホを与えてきた親なので
“スクリーン時間をゼロにする”のはあまりにもきついことは身をもって体感していますが
同時に、3か月間の“デジタルデトックス”も実践してきたからこそ言えるのが
子どもの育ちにスクリーンは大切ではなく、むしろ毒素かもしれないということです。
毒も少しずつ取り入れて、耐性を身につけるのは悪くないかもしれません。
でも現代の子どもたちは、乳幼児期から水のように毒を浴び続け
その毒は、外観からは簡単にわからない“脳”をむしばみます。
私はYouTubeも大好きですし、学べたこともたくさんあり、便利なツールに感謝してもいます。
なので、完全に排除しなければいけないというようなことは決して思ってはいません。
ただやっぱり、子どもの脳に対する刺激としては、大人が十分に注意してあげる必要があると思います。
ゲーム依存症や、ネット依存症と言われる『病気』の状態になる一歩手前の子どもたちや、エレクトリックスクリーン症候群・デジタル症候群といわれるような
『今はまだ医学的には“病気”とはされていないけれど、明らかに異常な状態』の子どもたちが、これからも増え続けていきそうです。
大きな利益がからむ事であるために、社会全体が危険を認識できるようになるまでには、まだまだ時間がかかると思います。
社会や、多数派がどうこうではなく、個人の体験や感覚として、切実に危険を感じています。
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